「え・・・・・・・・・・、私が副運営委員長?」






この男は一体何を言っているのだろう?





私は突然氷帝学園に呼び出された。



それはまだ、暑い夏がやってくる前のこと。



綺麗な校舎、気品が漂う会議室。




そこにのこのこ来てしまったこと事態間違いだったんだ。
























Eternal L O V E 〜prologue.01〜























「な・・・・ん・・で・・・・・・。」



「俺様が決めたからだ。」





相変わらずの俺様っぷり。



もうこの言葉づかいにも慣れてしまった。



でも、今回だけは、今回ばかりは突然すぎる。





「いや、無理です。」



「拒否権はお前にない。やれ。」



「そ、そんなこと言われても嫌なものは嫌なの!」



「お前にとっても良い話だ。やっといて損はねぇぜ?」




私の目の前には跡部景吾。



この上から目線が私は気に食わない。



そりゃぁさ、どっちかっていうと、追いかけるより追いかけられたい、




愛するより、愛されたい。



引っ張ってってくれるような人が好きだけど、これは・・・・・ただのナルシスト。



いきなり呼び出されて、しかもいきなりのお願い。



・・・・・・いや、訂正しとこう。お願いじゃなくて命令だ。



拒否権がないならば普通は聞いてこないんじゃないか?



そうされたら余計に怒ったと思うけど。





とにかく、目の前の人物のナルシストに振り回されれば疲れることは間違いない。






「良い話ってどういうこと?」



「まぁ焦んなよ。順番に説明してやる。」








9月の3日、4日にテニス部が主の学園祭を行うらしい。



主催は榊先生、そしてこの跡部景吾。


また何をやらかすのかと思えば・・・・くだらない。



テニス部対抗の出し物のコンテストがあるらしく、本当のねらいはそこだろう。


氷帝は青学にかりを返したい。



どうせなら大勢の前で。



なんとも彼らしい考え方だ。




「1つ質問!」


「なんだ。話はまだ終わってねぇぞ。」



「・・・・・・これ、やるのってもう決定してるの?」



「当たり前だ。もう会場も作ってある。業者にもいくつか声かけしている。」



「・・・あ、・・・・そう、なんだ・・・・・・・。」




こんな馬鹿みたいな企画、やめときなよと忠告してあげようと思ったら・・・・・・・。



意外と本気なんだね。




「でも、私はやらない。」



「もうお前がやるのは決まってるんだよ。」



「そ、そんなわけないじゃん!大体、私はテニス部なんて・・・・・。」



「まだ話は終わってねぇ。



 22日〜27日、29日〜30日までが準備期間だ。


 28日と31日は休みだ。宿題もあるだろうからな。


 9月の1日は始業式。終わったら学園祭の準備のためにすぐに会場に来てもらう。


 2日は慰労会だ。最終チェックと・・・まぁ前夜祭みたいなもんだな。



   そして、3日、4日が学園祭当日。


   2日に分けて行う。



 ・・・・・・まぁ大体こんなところだろ。」




「そんなもの私に説明してどうするの?」



「だから、お前には学園祭副運営委員長をやってもらう。


 運営委員長は俺だ。ま、当然だな。」




予想はしていたけど、やっぱりアンタが運営委員長ですか。


余計にやる気を失くさせる発言にげんなりする。



この男の下で働くなんて嫌だ。ろくなことがないに決まってる。




「嫌です。」



「・・・・話が戻ってんな。お前に拒否権はねぇ。」



「委員長だけでいいじゃない?」



「俺は氷帝テニス部の一員でもある。


 ちゃんとコンテストには参加するつもりだ。


 そうなってくると1人じゃさすがに目が届かないところがあるからな。」



「だったら他の子あたってよ。私は忙しいの。」



「ふん、暇だろ?それにお前しかいねぇんだよ。」



「私しかいない?」



そんなわけない。



「いっぱいいるでしょ?


 例えば・・・・うん、うちの手塚部長。」



「手塚?笑わせんな。あいつはライバルだ。


 何より気があわねぇ。」



「えと・・・・じゃぁ忍足くん。仲良さそうじゃない?」



「あいつは氷帝だ。2人も忙しくて抜けてたら他の学校と差が出るだろ。」



「んー・・・・・・・・・。」



「大体なんでむさくるしい男と2人っきりでやんなきゃなんねぇんだ。」



「別に、2人っきりにならなくても・・・・。」



「とにかく、だ。俺はお前がいい。」



「あ、あれだ!女の子がいいんでしょ!


 それだったら私の知り合いに可愛くて頭の良い優しい子がいるから紹介してあげよう。」



「だめだ。」



「な、何で!男じゃないじゃん!」



「顔の知らねぇ奴とは連絡もしずらい。


   それに、他のテニス部にも知り合いがいるお前ならうまくまとめられるだろ。」




結局はもめごと、雑用を押し付ける気なんだろう。


大体想像できる。



例えば学校。


校長はのほほんと座っているだけで、実際働いているのは教頭だ。


それと同じ。


これほど面倒くさいことはないだろう。



大体なんで夏休みを削ってまでこんなことやらなきゃいけないんだ。



よし、ここはちゃんと断って帰ろう。


いくらなんでも嫌ですと言っている相手に無理にやらせはしないよね?




「そんな面倒くさいことはやりたくないの。


 副運営委員長が見つからないならあきらめるしかないんじゃない?


 とにかく私はやらないからね。それじゃぁ。」



「おい、待てよ。」


ガタン、と席を立ち、ドアへと向かう。


意外にも跡部くんは追いかけてはこない。



ええい!これでいいんだ!



どうなろうと私の知ったことではない!




このドアを開ければ、楽しい夏休みが待っているんだ!
























・・・・・・・・・・・・あれ?



楽しい夏休みの・・・扉が・・・開かない・・・・?



え、ま、まさかね・・・?






「鍵がかかってる。お前が認めるまで帰さねぇ。」



「なっ、なんですと!?それって犯罪でしょ・・・・・・・っっ!」



「お前にいいこと教えてやるよ。」



後ろを振り向けばいつ来たのか跡部くんが立っていた。



後ろは開かないドア。その向こうには楽園。



目の前には口の端をあげて不適に笑う跡部景吾。





「さっきお前にとってもいい話だって言ったよな?」



「そ、それが何か?」



「施設の管理は万全だ。


 暇な時はお前の好きなことを好きなようにできる。


 それに・・・・・まぁ成績を上げてやってもいい。


 他にも色々特典はあるぜ?ま、それはやってからだな。


 とりあえずこっち来い。」



「ちょ、ちょっ!だ、出してよー!」



成績が上がるのは・・・・確かに嬉しい。



でも好きなことを好きなようにって・・・・。



総合的に考えてもあまり良くない。



夏休みを有効に利用する方がよっぽどいいじゃないか。




そんな悲痛な叫びは届かず、またも席に座らされる。




「やらないからね。」



「これにこのハンコ押せ。」



「ちょ!な、何でサインしてあるの!しかも私の名前のハンコを何故・・・・。」



「お前に拒否権はねぇ。だが形式上、契約書にサインはしてもらわねぇとな。


 安心しろ。トラブルがあった時は全部こっちが責任を持つ。」



「い、痛い!腕を引っ張るな!」



いきなり目の前に差し出された契約書。


そこには既に私の名前がサインされていた。


後はハンコを押すだけ。



驚いているうちに私の腕は捕まれ、いつの間にかハンコを持たされている。



ご丁寧に「」のハンコまで用意して・・・・・・。



こ、このままだと本当に押し付けられる。嫌だ。


所詮女と男。


力の差は言うまでもなく。


必死に腕を引っ込めようとするがあっちは遠慮なく腕を引っ張り、その先は契約書へ。




「大体の仕事は俺がやる。お前はそのサポートだ。」



「絶対嘘だ!嫌だ!私は夏休みを楽しく過ごそうと・・・・。」



「俺様と過ごせるじゃねぇか。幸せな女だな、お前。」



「それってすっごい最悪な気がするんですけど・・・・・・・。」





「俺はお前と過ごしたい。


 学校が違うからな。中々一緒にはいられねぇ。


 だから、せめて夏休みだけ。2週間ぐらいは付き合え。



 俺が最高の夏にしてやるから。」



「あ・・・・・・・・・・、ぅ・・・・・・・・・・っっ。」



不意をつかれた。


この時の心の揺らぎが命取りだったんだ。



動揺したのをいいことに跡部くんはすぐさま力が抜けた腕を引っ張り契約書の紙へ移動させる。



気付けばさっきとは違う、私の名前の横に「」の文字。




あ、あれ?も、もしかして・・・・・やっちゃった?



すかさず紙を取り上げ、ファイルの中にしまっている。



ちょ、ちょっと・・・・・・・・・。まだやるなんて一言も言ってないんですけど・・・・・・・・。




「惚れたか?」


「なっっっっ!ま、まさかでしょ!っていうかそれ、返して!」



「ダメだ。一応監督に提出しなきゃいけねぇんだよ。


 今から会場に行くぞ。一通り回って確認する。」



「や、やんないからね!」



「サインしただろうが。」



「だからあれは勝手に跡部くんが・・・・・・。」



「オラ、さっさと行くぞ。少し長びいちまった。」



荷物を持って横を通り過ぎていく。



悪魔だ。やっぱり天敵だ。



こんな人と一緒に過ごす?信じられない。



あまりのショックさに体が動かない。




「何してんだ。置いてくぞ。」



「・・・・・・・・。」



「ったく・・・。」



「うわっ!」




腕をまた捕まれ、無理矢理立たされる。


当然、私の身体はバランスを失くし、抵抗もできず跡部くんの腕の中へ。



「でも、さっきの言葉、惚れただろ?」



「そ、そんなわけ・・・・・。」



「言っとくが、さっきのは本気だぜ?」




頬にキス。


あまりにも密着していたので誤って口が当たってしまったのかと思うぐらい、優しく触れるだけのキスだった。




「この続きは学園祭だ。いくらでもキスしてやる。」


「い、いいよ!も、行くんでしょ!」




しまった。


と思ったのはまたもや遅くて。




「フッ、やっとやる気が出たか。


 校門に車は用意してある。早く行くぞ。」












扉が簡単に開く。



その先にあるはずの楽園は今はもうなくて。



しょうがないんだと思うしかなかった。











でも、ちょっと楽しいかもって思ったのは秘密。
























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ここからだ。ちゃんと俺様について来い。損はさせねぇぜ?