苦手だった
だからあの席になった瞬間嫌な予感がしたんだ
嫌がらせの至近距離
「・・・・・・であるからここの答えは......」
眠くなるようなあの声。
どうして教師の声というのは眠気を誘うのだろう。
おかげで私の眠りたい度は頂点に達していた。
「・・・・・・おい、、聞いているのか?」
「は、はい、スミマセン・・・。」
全くお前は・・・といういつもの説教。
あわてて立ったが周りの皆はいつものことかと顔色一つ変えずにノートをとっていた。
はぁ、とため息をつきながら席につくといきなり肩をたたかれ、そっと紙を渡された。
後ろの席は忍足侑士。
うちの学校はなんにでも1位にこだわるからスポーツに関しては有名なんだけど、
テニス部は別格。
なんていったってイケメンぞろいにテニスがうまいときた(漫才師ですか)
そのテニス部レギュラー、色気もあって中学生には見えない忍足くん(今なんか付け足したやろ)
そんな人から紙を渡された。なんだろ?
とりあえず手紙を受け取り先生にバレないようにそっと開いた。
『俺のこと好き?』
え・・・・・・、あ、私あてじゃないのか。
見ちゃいけなかった〜。
急いで折りたたみ、前の人に渡そうとしたとき、
「あてやで?」
思わず後ろを振り向くと忍足がびっくりした顔でこちらを見ている。
親切に教えてくれたのは有難いがなぜ、耳元で囁くんだよ・・・(びっくりするじゃないか)
微妙にうなずきながら前を向き、もう1度紙を開く。
・・・・・・え、俺って誰ですか?
まさか後ろの忍足じゃないよね。
『すみません、俺ってどちらさんですか?』
後ろを振り向かずに忍足の机に置いた。
どうせイタズラだろう。
しばらくしてまた睡魔が襲ってきた時、忘れかけていたあの紙が回ってきた。
『俺やけど』
え・・・・、え・・・、ええ!?
関西弁を使う人はこのクラスに1人しかいない。
そう、私の席の後ろの人。
ということはこれは2人だけのやりとりなのか?
慌てふためきながら返事をした。
『何それ 別に好きじゃないけど』
風の噂かなんかかな?
っていうか何でよりによって忍足なんですか。
どうせなら跡部くんとかカッコイイ人と噂がよかった。
そう、私は忍足が苦手です。
何でって、あの眼鏡の奥で何考えてるか分からないから。
噂に聞くとあの眼鏡は伊達だっていうじゃないか。
・・・・・・ますます分からん。
今度はすぐに返事がきた。
『が好きやなくても俺は好きなんやけど どないしてくれるん?』
思わず開いた口に手をあててしまった。
よし、もう1度確認しよう。
【が好きやなくて】
ん、あってる。
これは私が前に返事した通りですね。
【も俺は好きなんやけど】
え、何でですか。
俺って忍足だよね・・・・?
何でそうくるのかな。
ということは忍足は私のことが好き・・・・・・?
ありえないありえないありえない!!!!!!
だってろくに会話したことないもん!(避けてたから)
【どないしてくれるん?】
標準語に直すと、「どうしてくれるの?」
・・・・・・
知りませんけどっ!!!
え、どうしようもないですけど。
私が悪いんですか?
『私が悪いの?』
何がなんだか分からないまま返事をしてしまったためにこんな返事になってしまった。
『分かっとるやん 俺の気持ちどないしてくれるんや』
やっぱりですか。
私が悪いんですか。
というかあえて突っ込まないんだね。
『これ、イタズラ?』
『本気やねんけど』
イタズラでもないんですか。
これで最後に「冗談やで☆」とか言われたら本当に殴り倒しますよ。
『だって私と忍足なんて話した事もあんまりないじゃない?』
『それはが避けとるだけやん』
確かに。
どうしたらいいんだろう?
っていうかなんかからになってるんですけど!!!
これはもしかしなくとも本当に本気なのだろうか?
そんなことに期待する自分がわけ分からなくなってきた。
友達に相談しようにも今は授業中。
机の上には真っ白のノートのノートの上に忍足とのやりとりが記された小さな紙。
今、忍足は何を考えているんだろ?
どんな顔してるのかな?
うわ、だんだん気になってきた。
後ろの席だから全く顔が見えない。
おまけに真後ろときた。
よりによってどうしてこんなに近いんだ・・・・・・
しかも何となく後ろから視線を感じる。
・・・・・・自分で思ってるだけかな?
そう思うとますます気になってきた。
こんなこと考えようともしなかったのに
私が忍足のことを好きかもなんて。
『なぁ、返事まだなん?』
どうしてそんなに急いでるんだろ?
返事しようにもどうこたえていいのか分からない。
と、とりあえず整理しよう(本日2回目)
突然紙が後ろから回ってきて・・・
「なぁなぁ、?」
「ちょっと、待って・・・・・・っ!!!」
今度は肩をたたかれてせかされたので思わず振り向いてしまった。
その瞬間机から身を乗り出して顔を近づけてくる忍足さん(ちょ、何してるんですか!)
何も身動きのとれないことをいいことに唇を重ねてくる。
「この机、邪魔やな・・・。」
突然ガタンとイスから立ち上がり、唖然としている私を立たせて抱きしめた。
周りからは「キャー!」だのなんだの女子の悲鳴が聞こえる。
そんなことは気にせずさっきより強く抱きしめてくる。
「お、おい!忍足!!何してるんだ!」
「何って抱きしめあってるですけど。」
「今は授業中だぞ!何考えてるんだ!」
「やってが返事くれへんから・・・。」
そう言って私の方を向き、ニヤリと笑う。
・・・・・・え、私がまた悪いんですか(いまいち状況分かってない)
と、同時に終わりを知らせるチャイムが鳴り響いた。
「忍足とは放課後、教員室に来なさい。」
「えぇ!!!私は被害者・・・」
「ええやん。別に。」
振り向くとそこには満面の笑みの忍足侑士。
相変わらずクラスの子は呆然としている。
どうしてくれるんだよこの状況。
「や、やっと終わった・・・。」
「お疲れさん。なんやえらく長かったな。」
放課後、言われたとおり2人で教員室に行った。
予想以上に怒られた(いろんなことで)
「忍足、部活いいの?」
「ん?あぁええよ。今はと一緒におりたいから。」
「っ・・・・・・///」
「照れた顔も可愛いな。」
何も言えない・・・・・・
「なぁ、返事まだなんやけど。」
「え?あ、あぁ・・・・・・。」
「なぁ、も俺のこと好きなんやろ?」
「え・・・・いや・・・・・・。」
腰と頭に腕を回し、またもやきつく抱きしめてくる忍足。
後ろは壁。前には嫌というほど近すぎる忍足さん。
ちょ、この状況はヤバイ気がする。
「めっちゃ好きやねん。返事も待たれへんぐらいに。」
「ど、どうして・・・」
「どうしてもや。俺のもんにしたい。」
「い、いつから・・・」
「ずっと。せやけど全然俺の方見てくれへんやん。」
「のことがどうしようもあらへんくらい好きになってしまったんや。」
氷帝の天才がな・・・、何でやろ?と苦笑しながら話す。
本気なんだ・・・・・・。
「、キスしてええ?」
「えっ!?」
「ほんまは返事なんてどうでもええねん。どっちでも俺のもんにしたるから。」
「え、え、・・・???」
「好きやで、・・・・・・」
おでこをくっつけて至近距離で話す忍足(だいぶ近い)
眼鏡が微妙に顔に触れる。
前だったら叫んでいただろう。助けてと。
それでも今までとは違う、少し嬉しい。
気付いたら自然と目をとじていた。
「んっ・・・、お、し・・・・・・・たり・・・。」
「すまん、苦しかったか?」
「いや、平気・・・・・・」
「あのね、忍足。」
「ん?何や?」
「・・・・・・好き。」
思わず口をついて出た言葉。
こんなことを言う日がくるなんて。
「俺も好きやで。。」
「う、うん・・・・・・///」
「好きやなかったんやろ。でも嬉しいわ。」
「・・・・・・」
「今はホンマに好き?」
「うん。好き。」
「おおきに。」
いつもはクールで人には冷たいところがある忍足。
こんなに笑っている顔は初めて見た。
「忍足、笑ってるほうがカッコイイね。」
「そうか?それなら大丈夫や。」
「???」
「とおると笑える気する。せやなかったら告白なんてしてへんもん。」
そこには笑いあう2人がいた。
嫌がらせの至近距離
あなたはどう思いますか?
END
席は窓際、外は雨の設定で書きました
あえて書かなかったのはもう1度読んでほしいから(笑)
Photo-by 七色十色
title-by as far as I know