「侑・・・士・・・?」


「忍足の奴なら今日は休みだぜ。」





侑士が学校休んだ。

それじゃ、私が学校にいる意味なんてないじゃないか。
















失くしたくないもの















「入ってきていきなり嫌な顔すんじゃねぇよ。」


「本当にいないの?」


「あぁ。なんか風邪らしいぜ。」





宍戸に聞いたら本当に侑士は学校を休んだらしい。

ほ、本当に学校休んじゃったんだ・・・。

風邪?昨日は元気だったのにな。


それじゃ、私が学校にいる意味なんてないよ。



だって侑士に会いにきているようなものなんだから。
















「な、何やってんの?」


「あ、午後の授業出ないから。」


「は?ちょ、どうする気?」


「急用を思い出してね。親友のさんよ、後は頼んだ。」


「え、ちょ、!!!」





侑士に会いたい。それだけだった。

付き合い始めてからずっとベタ惚れ。


これも侑士にバレないようにしてるんだけど・・・。

だってなんかしつこい女とかに見られたら嫌じゃんか!



でも、とりあえず今は一大事です。

そんなこと言ってられない。



今から侑士の家に行ってきます(授業はいいんだ)
















あー、何で風邪なんてひいてしもたんかなー。

考えても何もでぇへんけど。


どうしとるやろか。俺がいなくてもあの笑顔ふりまいてるんやろか(あれは俺専用やのに)

に会いたいなー。会いたい会いたい。

授業終わったらメールするかな。

まぁのことやから来てくれるか分からへんけど・・・・・・。





ん?インターホン、鳴ったよな?

誰やろ。頭痛いし熱っぽいっちゅうのに・・・。

出なくてえぇやろ。どうせ広告やし。


居留守使ったろ。





ピンポンピンポンピンポン





あー、もう、うっさいな。


いくら俺でもきれるで。

しゃぁない、出たるか(感謝せぇ)


これで熱あがったらそいつのせいやからな。





「はいはい、何で・・・、しょう・・・か・・・。」


「だ、大丈夫?侑士?」





あかん、幻覚まで見えとる。

ほんまちゃんと休んどこ。





「いやいや、何でドア閉めるのさ。」


「ん?がここにおるはずないやん。今は授業中やで。しっかりせぇ俺。」


「私だから。さんですよー。」





たとえ幻でもええ声やな・・・。

心があったまる。


・・・・・・ホンマになんかな。





なん?」


「そうだよ。お見舞いにきたよ。」


「何で自分ここにおんの?今まだ学校におるはずやろ。」


「その・・・、色々ありまして・・・。」


「言わんとあがらせへんよ。」





色々ってなんやねん。めっちゃ気になるやんか。





「その、侑士に会えないなんて学校にいる意味なんてない・・・かな・・・なんて。」





幻聴まで聞こえ取る。もうほんま病院行った方がええんちゃうかな、俺。


がこないなこと言うはずないやん。

あの恥ずかしがりやなが。





「自分、偽者やろ。」


「ち、違うって!ちゃんと理由言ったじゃん!」


「ほんまに?」


「本当です。」


「まぁええわ。あがってええよ。」


「お邪魔しまーす。」





が見舞いに来てくれた・・・。

しかも、俺がいないから学校サボってまで・・・。


むっちゃ可愛いやんか。

俺のためにそこまでしてくれるんやなんて。





「あ、侑士はちゃんとベッドで寝てなきゃダメだよ?」


「ん、分かっとるよ。有難うな。」





なんや、新婚さんみたいやな(熱あがってまうわ)


ほんまにがおる。いまだに信じられへん。

・・・・・・夢とちゃうかな(そうやったらめっちゃへこむ)


夢やったとしても今をちゃんと楽しまんとな。





「熱はどう?やっぱり辛い?」


「んー、分からん。」


「分からんって・・・。じゃぁ熱測って。」


「ん。」





たぶん、あがってるやろな。

さっきもだいぶあったからな・・・。


が来たからこんなにあがったんやで?





「どう?」


「38.0℃」


「す、すごい熱じゃん!ごめんね、私が来たからかな?」


「よう分かっとるやん。」


「ご、ごめんなさい・・・・・・。」





あぁ、そない悲しまんでもええのに。

のせいじゃないで?のせいやけど(結局どっちやねんな)(要するにはのせいやけどは悪くないんや)



気付いてへんのやろなー、は。





「冗談やって。さっきもそんぐらいあったから別に気にせんでええよ。」


「でも・・・、やっぱり来なかったほうが良かったのかな。」


「そ、そないなことないで。めっちゃ嬉しいで。。」


「そう?良かった。」





可愛ええ。


もう絶対離さへん。

ころっと顔の表情変わるんやなー。





「台所借りていい?」


「ええよ。」


「ちょっと待っててね。」





何か作ってくれるやろか。

ほんまに新婚みたいやんか。


パタパタ走る姿もめっちゃ可愛ええ。

熱無かったらそのまま後ろから抱きしめるんやけどな(ホンマ、何で熱あるんやろ)


まぁ熱でもひかんとは中々家あがらんからな。





「お待たせ。」


「・・・何や?すりおろしりんごか?」


「うん、子供のときによく熱出たら作ってもらってたんだ。」


「そうなん?ほな、が折角作ったんやから頂くわ。」


「どうぞどうぞ。」





が作ったっちゅうところが大事なんやで(ここテスト出るで)


・・・・・・ちょっと待て。





「なー、俺しんどくて起きれへん。」


「そうなの?大丈夫?」


「(手強いな)のりんご食べられへん。」


「えっ!りんご苦手!?」





あかん、この子天然や(そこも可愛ええ)


しゃーないなー、これも計算なんかな?





「せやからね、食べたいねんけど体が動かへんねん。」


「・・・・・・。」


、食べさせてー?」


「・・・・・・ズルイ。」


「???何がや?」





俺がズルいん知っとるくせに。

あ、CDもそんタイトルで出とるから。よろしゅう(一応宣伝しとかな)


そうは言うてものがよっぽどズルイで。


オレにこないなことまで言わしとるんやから。





「侑士が言うとカッコイイからズルい。」


「そうなん?」


「侑士が言うとやだって言えない。」


「そやったら言わなかったらええやん。」


「そうだけど・・・・・・。」





だってこういうの恥ずかしいじゃん!って言いつつも顔赤いで、


ちゃーんと文句言うてもやってくれるとこえろがええ子やね。





「ど、どうぞ・・・。」


「ん、ありがとうな。」





口の中に広がる冷たさと甘さ。

熱があるせいかやけに冷たく感じるな。

ちょうどええ感じやん。



そんままずっと食べさせてもろてた(俺って幸せやな)


そや、これもいい機会や。

が俺んことどのくらい本気でも思っとるんか確認せなな。

ここまでやってくれとんのも親切とかいうんちゃうやろけど(ならどの男にでも親切でやりそうや)





「・・・・・・。」


「ん?何?」


「もう帰ってもええよ?」


「・・・・・・。やっぱり邪魔だったかな。」


「そうやない。せやけどな、俺の風邪がに移ったらどうすんねん。」


「大丈夫だよ。私は元気だから。」


「・・・あんなー、こんな話しっとるか?」


「ん?」


「昔の王子様が風邪引いてしもて、それを一生懸命看病する王女なんやけどな、風邪移ってしもて2人とも倒れてしまったんや。」


「ええ!?そ、それで?」


「2人とも一緒に死んでしもたわ。」


「う、嘘・・・・・・・。」


「せやからな、昔から風邪は好きな人に移るって言われとるんやで?」


「そ、そうなんだ・・・。知らなかった・・・。」





どうしようとあたふたしとるも可愛ええ(末期や)

んな話あるわけないやん。聞いたことないで。

せやけどな、これでもン気持ち知るためや。


はこういうの好きやからなー、信じてまうやろ。





「で、でも・・・、昔の話でしょ?」


「せやけど同じようなことずっとあるから言われてるんやで?」


「うーん・・・。」


「俺はが傍にいてくれるならそれほど嬉しいことはないけどな、ンこと好きやから、移ってほしゅうないから言っとるんやで?」


「で、でもさ・・・、やっぱりいるよ。」


「何でなん?」


「私に移ってもいいよ、それで侑士の風邪が治るなら。
 そしたらテニスだって出来るし・・・。元気な侑士が私は一番好きだから。」


「せやかて、治るとも限らんし・・・。」


「いいの!とにかく、侑士が居て欲しいんならずっといます。嫌なら帰るけど・・・。」


・・・・・・。」


「ひゃっ!」





なんやねんもう、この子。

思わず抱きしめてしもたやんか。

いつもは恥ずかしがって俺の家も来ないくせに。


「ずっと居る」?ちゃんと聞いたで。

俺が望むんやったらずっと傍にいてくれるんや・・・。





「あの、侑士、動けないんじゃ・・・。」


「有難うな。せやったらずっと傍におって?」


「(無視ですか)う、うん。分かった。」


「ずっとな。ずうっとな。」


「うん・・・・・・・。」





俺、風邪引いて良かったわ。




「あんな、。」


「何?」


「さっきの話、全部嘘やで。」


「え、ええ!?」


「あ、逃げるんはなしやで。」





ちゃんと聞いたからな。


「侑士が居て欲しいならずっといます」て。



約束は守らなあかんで?











END















風邪ひいた侑士はいつにも増してカッコイイと思います。