【38.9℃】
今日は学校に行くのやめよう
Hot Illusion
「うーん・・・・・・。」
朝起きてみるとこの始末。
何か思い当たることはないかと模索してみるも、検討がつかず。
クラスで風邪が流行っているといわれれば確かに咳き込んでいる人はいたが、こんな高熱など出てなかった気がする。
・・・・・・ひ、日頃の行いのせいだろうか(ちゃんとしてたんだけどな)
今日はとりあえず学校を休もう。
よかった、これで宿題が出来ていないのも何とかなった。
重い頭を持ち上げ、学校に電話しようと思い受話器をとる。
先生は意外とあっさりしていて「お大事に」の一言もなかった。
・・・・・・ちょっとは心配してくれたっていいのにさ。
ピンポーン
「ん・・・・・・・・・・?」
インターホン?なってる?
まだちょっとしか寝てないんだから・・・起こさないでよ・・・。
よし、こうなったら居留守使おう(バレないって)
ピンポンピンポンピンポン
おいっっっ!!!!!!!
そんな何度も鳴らさなくたって分かってるよ!!!
っていうか出ないんだから留守かなって思えよ!!!
こうなったら意地でも出ないから。
そう決心した数秒後、玄関先でガチャガチャと不審な物音が。
・・・・・・留守だと分かって入ろうとしているのだろうか(いわゆる泥棒ですか!?)
えーと、どーしよー・・・・。
ちなみに1人暮らしだから誰も助けてくれる人はいない。
起きようにもさっきよりひどくなっているのか体が動かない。
よし、布団かぶって居留守のままにしとこう。
そうしたら襲われたりしないわけだし・・・・・・。
しばらくすると、ガタンと扉が開いた。
完璧に泥棒じゃないですかっ!!!
よりによってこんなときに!
「起きてるんなら出てきんしゃい。」
・・・・・・あれ?
聞き覚えのある声とともにベリッと布団がはがされる。
恐る恐る目を開けてみるとそこには銀髪のクラスメイトが。
「仁王・・・・・?」
「そうじゃよ。何しとるんじゃ。」
「な、何してるって・・・・君こそ何してるんですか。」
普通に会話をしているけどちょっと待て、冷静に考えたら仁王がここにいるのはだいぶおかしいじゃないか。
大体今日は学校でしょ?
っていうかそれ以前に何人の部屋勝手に入ってるんですか・・・・?
「お前さん、何で携帯でんのじゃ。」
「携帯?・・・・・・あ、」
仁王が指差す方向を見てみると、着信表示の出ている携帯電話。
そういえば、マナーモードのままだったっけ。
「返事がないんで来てみた。」
「いや、それだけで普通来ないでしょ。学校は?」
「学校よりお前の方が大事じゃ。」
「なっ・・・・・///」
こんなときまでからかっている仁王はどうかしている。
ニヤッと不適な笑みを浮かべておでこに手を当ててくる。
「・・・・・・だいぶ熱あるようじゃな。」
「うん。だから学校休んだ。」
「ふーん。」
どうしよう。この状況。
仁王の手が離れたと思うと今度は整った顔がどあっぷに。
あわわわ(言葉にならない)
仁王が自分のおでこをくっつけてきたのだ。
ちょ、ちょ、何考えているんでしょうか・・・・・・。
「だ、だめだって!!!」
「何がじゃ?」
「だって・・・こんなに近いと風邪うつっちゃうよ?」
「ええよ別に。人にうつした方が早く治るて言うじゃろ。」
「の風邪じゃったらむしろうつりたい。」
反則だと思う。
さっきまでニヤニヤ笑っていた顔が急に真剣になった。
ドキドキする。こんなこと今までなかったのに。
「・・・・・・ここまで雰囲気作っといて布団かぶるとはいい度胸じゃな。」
熱で赤い顔がますます赤くなっていくのが分かった。
詐欺師にこんな顔見られたらまたなんて言われるか・・・・・・・(だから隠れたんだよ!)
「俺が看病しちゃるから。」
「仁王が?」
「俺が。」
「ペテン師が?」
「ペテン師が。」
「・・・・・・余計悪化しそう。」
「それは俺が魅力的だからか?」
クククッと喉をならす仁王さん。
絶対言えないけどそれも理由としてはあげられる。
「その前に質問させて。」
「質問?ええよ。ただし、スリーサイズは秘密じゃ。」
「いいよそんなの。知りたくないし。」
「おおー、今のはちょっときいたぞ。」
初めてかもしれない。仁王とこんなに話したのは。
いつもはどことなく近寄りがたい雰囲気を出しているからかなー。
私との性格も正反対そうだったし。
唯一のつながりといえば、比呂士だったっけ。
比呂士は何故だか仁王とはダブルスペアらしい(テニスあんまり興味ないからあやふや)
それ聞いたときはびっくりした。
「ええ!絶対やめたほうがいいって!」
「(そ、そんな全力で止めなくても・・・)大丈夫ですよ。彼はああ見えて紳士的なところもありますから。」
そんなこんなで多少は話したこともあったけど面と向かって話すのは初めて。
「まず、今日の学校はどうしたんでしょうか。」
「行ったぜよ。」
「でも、ここにいますが。」
「じゃから、が心配で来てやったんじゃ。感謝しんしゃい。」
ど、どう思いますか、これ。
冗談にもほどがあると思う。
「からかうのならよそでやってほしいな。」
「いやいや、本気じゃよ?」
「まぁ・・・・じゃ次。何で私の家を知っているの?」
「それは秘密ナリ。」
別にストーカーじゃないぜよという言葉も信用できない。
この人は秘密が多すぎて読めない。
比呂士に言わせるとそこも彼の魅力なんだとか(ますます分からん)
「っていうか鍵かけてたはずなんですけど。」
「開けた。」
「いや、開けたじゃなくて。どうやって?」
「これよ。」
ポケットから出てきたのはごく普通の針金。
何でそんなものを持っているのだろうか。
よくもまぁこんなもので・・・・・・。
「犯罪とか思わないわけ?」
「何もしとらんじゃろ。」
「いや、十分してるし。普通しないよね?」
「俺は普通じゃないきに。も分かっとるじゃろ。」
自覚してるんだ・・・この人。
確かに、詐欺師と言われれば何もいえない。
でももう1つだけ分からない理由がある。
「じゃぁ・・・・・・。」
「なんじゃ、まだあるんか?」
「だって、怪しすぎるから。これが最後だよ。」
「ん。じゃったらええけど。」
「何で看病しに来たの?」
「・・・・・・。」
急に黙る仁王。
しかも覗き込むように見てくる(ち、近い)
「何でじゃと思う?」
「な、何ででしょう?」
相変わらず口元がつりあがっている仁王さん。
そしてこちらも相変わらずドキドキしているさん(だって止まんないんだよ!)
「が好きじゃから。」
「が愛しいから。」
「が学校来んかったら俺も行く意味ないけぇ。」
「風邪じゃったらなおさらじゃ。俺が看病してやらんと。」
「じゃから、来た。好いとぅんとこ。」
もう、ダメだ。
こんなに仁王ってカッコよかったっけ?
詐欺師だって分かってる。今言ってる言葉も全部嘘かもしれない。
だって噂が『恋愛詐欺師』
でも、そんなに真剣な目で見られたら、信じてしまう。
「なんじゃ、急に赤くなって。熱、悪化したかの。」
「さ、触んないで・・・。」
「水、飲めるか?」
頬にあった冷たい手が離れ、コップに手が届いたかと思うと、
「っっっんっ!!!」
「んはっ、あばれなさんな。」
仁王は何を思ったかコップの水を飲んだ。
ここまではいいのだ。
仁王だって喉くらい渇くさ。
「ちょ、ちょ、な、何・・・・・・。」
「が苦しそうだったんでな。」
「だ、だからってそんな・・・・・・。」
「ファーストキス・・・じゃったか?」
いつになく嬉しそうな仁王。
いきなり唇が触れたかと思うと仁王の口のなかの水が流れ込んできた。
・・・・・・・・・ファーストキスだったのに。
「最悪。」
「親切にしてやったことに対してそれはなかろう。」
「だって頼んでないもん!」
「言ったじゃろ。」
「俺が看病するって。」
「今日は俺からは逃げられんぜよ。」
こんなカッコよくて詐欺なお医者さん。
私には耐えられません。
火傷しそうなほど ときめいてる
「今度俺が熱だしたら責任もって看病するんじゃよ?」
END
笑ってる仁王と真剣な仁王のギャップが大好きです