「たまには束縛されたい。」
普通、こんなこと言いますか?
Hot Illusion
只今、仁王雅治さんのご自宅。
学校で当然のように私の目の前に座り、これまた当然のように言った言葉。
「今日、ウチ来て。」
いつものことだけど、どうやっても慣れなくて。
自分の顔が赤くなっていくのが分かる。
それを雅治は面白そうにからかう。
「真っ赤になって・・・そんなに襲われたいんか?」
そんなわけないでしょ!!!と反論すれば、
「なんでもいいけぇ。約束、な。」
そう言ってすぐに席を離れてしまった。
そして今。
もう何回も雅治の家にはお邪魔してるから特に緊張なんて・・・・・・。
めっちゃ緊張してます。
慣れるわけないだろー!!!
相手はあの「詐欺師」
何かされるんじゃないかという不安と同時に、学校でも1、2位を争うほどのカッコよさ。
ドキドキしないわけがない。
というか何でこんなカッコイイ人と私が付き合ってるのか未だに疑問なんですが・・・。
しかも今こうして壁際に追いやられている。
・・・・・・あれ、何で追いやられてるんだろ?
「、聞いてる?」
「あああ!ごめん!!!聞いてるよ?」
不安そうに顔を覗き込んでくる。
いつもは余裕な顔でどこか上から目線の雅治。
でも時々こういう可愛いことするんだよね・・・。
もうっ!可愛いんだから!!!
「何ニヤケとるの。キモチ悪。」
「なななななにおう!」
「こらこら怒りなさんな。まだ話おわっちょらんし。」
帰ろうとすれば腕をつかまれ、状態は変わらず。
ににに仁王さん、やけに近いのですが・・・・・・。
「何の話でしたっけ・・・・?」
「ほら聞いちょらん。」
「ごめんって!何でしたっけ?」
「たまには束縛されたい。」
「・・・・・・・・・はい?」
まったく理解のできない言葉。
そ、束縛?
「いつも俺ばっかり攻めてる気がするけぇ。
たまにはから攻められたい。」
「え、え、ええええええ!!!!!」
「・・・・・・嫌なんか。」
そう言うなりブスッと拗ねたようにそっぽを向く。
あああ、だからそれが可愛いんだって!!!
「(ああもう、よしよし!)ああああのですね、嫌とかそういうんじゃなくて・・・・。」
「じゃあよろしく。」
今まで掴んでいた腕をパッと離し、両手を広げいつものような怪しい笑み。
・・・・・なんだか騙されたような気分。
「ほれ、束縛してみんしゃい。」
「・・・・・・・。」
確かに、考えてみればいっつもそういうのをやるのは雅治からだった。
そりゃ性格的にそうだろうけど・・・・。
雅治からすれば不公平だ、とか感じてるのかな?とか思ってみちゃったり。
・・・・うーむ、これは従うべきなんでしょうか・・・・・?
とりあえずいつも雅治がやっているように腕を掴んでみる。
恐る恐る顔を近づけてみる。
雅治は最初はちょっと驚いたような顔してたけどそこから何故か口元がつり上がる。
そう、この顔は何か企んでいるサイン。
「・・・・・・・。」
「ん?どうしたんじゃ?」
「・・・・・・・。」
「ほれ、言わんと分からんよ?」
そうです。
そうなのです。
身長175センチの彼と私ではいくら首を伸ばしても届かないのです。
おまけに雅治ときたら顔を近づけるどころかちょっとのけぞって明らかに楽しんでいる。
たまらず腕を引っ張ってかがんでと要求する。
「ん?どうしたん?そんな引っ張ったら痛いき。」
「・・・・・・・(完全に楽しんでる)」
知らないふり。
いっつもこれだもんねー、雅治くんは。
雅治と結構付き合ってきて分かる。
雅治は私の扱い方をよく知っている。
付き合った当初は予想とは裏腹にいろいろ気遣ってくれた。
こう、なんかイメージ的に「勝手にやっとけ」みたいな感じじゃない?
冷たいっていうか・・・たとえ彼女でもマイペースな彼は変わらないのかなって。
でもそんなことはなくて何かと気にかけてくれた。
並んで歩いてる時とか全部私の歩調に合わせてくれるし、
誰よりも先に私の心を読んで行動してくれる。
今もそれは変わらないけど、なんだか最近Sっ気発動?!
甘えてきたと思ったらこうしていじめる。
・・・・・最近改めて詐欺師っていうものが分かった気がする。
つくづく比呂士はすごいなと思う。
そんなことを考えていたらずっとこっちを見ていた雅治が顔を近づけてきた。
ち、近い!!!また近くなっちゃったよ!!!
「ん。」
「・・・・・・・///」
ほら、また。
意地悪したら最後はこうやって優しくしてくれる。
そうされたら悪い気はしないわけで。
目の前にきた唇にそっと触れてみたり。
「・・・・・・・もっと。」
「えええ!!!」
「もっと欲しい。」
再度顔を近づけてキスする。
恐る恐る唇をわって舌を滑り込ませる。
違う感触に触れた瞬間、思わずビクッとしてしまう。
こういうのは慣れないんだよー・・・・。
いっつも雅治にまかせっきりだから・・・。
自分の中でも限界なことに気付き唇を離す。
意外にも雅治は抵抗せずに離れてくれた。
うわー、自分今すっごい顔赤いよ・・・・。
顔に手を当ててみる。うわっ、やっぱり熱い。
雅治はどうなんだろ・・・・・。
っていうか雅治って顔赤くすることとかあるのかな。
「今度は俺の番。」
「へ?・・・・・っ!」
顔が赤くなるどころかなんだか満足そうな笑顔。
腕を掴み、壁に体を押し付けて噛み付くようなキスの嵐。
でも、それはどこか優しくて。
心地よいって思ってしまうらへん、完璧に好きになってしまったんだと思わざるをえない。
「んー・・・・・。」
「ほい、ごちそうさん。」
自分の唇を舌で舐める。
雅治がやるとなんだかいやらしいよ・・・。
不意に引き寄せられて抱きしめられる。
普通にしたら雅治の方が背が高いから必然的に目の前は真っ暗になる。
それがなんだか包み込まれてるみたいで私は好きなんだな。
ぎゅっときつく抱きしめてくれる。
痛くない程度に、加減しながら。
「ふふ、可愛い。」
聞こえない程度につぶやいてみる。
肩に顔をうめていた雅治は・・・・ん?
なんだか・・・落ち着かないご様子?
「ど、どうかしたの?」
聞いてもかすれた唸り声だけが返ってくる。
えええ!!!
ど、どうしよう・・・・・。
私とキスしたせいで気分悪くなったとかシャレにならない!
「だだだ大丈夫?!熱、あるのかな?」
いきなりバッと顔をあげる。
ととりあえず私のせいでは・・・ない・・・・?
「・・・・・・。」
「あ、あの・・・仁王さん?」
雅治の目は少し潤んでいて。
ああ、欲情してるんだってすぐに分かった。
顔はいつものような余裕なんて全然なくて。
むしろ苦しそうに何かを耐えている。
・・・・・・これもまた優しさなんだろうか?
「・・・・・・・・・してもいいよ?」
・・・・・言ってしまった。
だだだってすごい苦しそうなんだもん!
私のこと傷つけないようとしてるんだったら・・・なんだかすごく悪い気がする。
「雅治が苦しいと・・・・私も苦しいよ・・・・・。」
雅治を見れば珍しく目がまんまるく見開いている。
・・・・・・そ、そんなに意外・・・かな?
まあいつもはこんなこと絶対言わないけどね。
「したい・・・・・・・・けどできないんよ。」
「???」
「約束・・・したんじゃ・・・・・・。」
「な、何を?」
「今度の試合までやらんって。
そうでもせんとやる気おきん。」
な、なんてことを・・・・・。
やる気おきないって・・・・・・。
「しょうがないき。
後に楽しみがあった方が燃えるじゃろ?」
「そ、そうじゃなくてもちゃんとやりなよ・・・。」
「ん?やっとるつもりなんじゃけどな。」
いつもより弱気な笑顔。
何かあったのかな・・・?
「雅治?」
「大丈夫じゃ。
終わったら激しいのしちゃるから今は許して?」
「なっ・・・・!!!」
そそそこまで言ったつもりはないのですが・・・!
というか雅治を慰めるためみたいな感じだったのにいつの間にか私がしてほしいみたいになってる?!
よしよしと頭をぽんぽんとされて・・・。
だから!違うって!!!
「はほんま可愛ええのぅ。
危うく襲ってしまうところじゃった。」
「ああああのですね、仁王サン、それは・・・・。」
「最近しとらんからな・・・。欲求不満じゃったんかの?」
「ででですから・・・・。」
「キスでがまんして。」
いろいろ何かが違う気がするけど、
そうやってまた優しくするから、
言おうとしてたことが言えなくなるんだよ。
Hot Illusion
「好いとぅよ。」
END