、おはようさん。」


「お、おはようございます・・・。」





あの日からこの人に会うたびに心臓がうるさい。
























Hot Illusion
























いきなり後ろから現れて隣を一緒に歩き出す。


私の横に並んだとたん、歩くスピードはゆっくりになって。

「あちぃ」と言いながらシャツをパタパタさせている。


どことなくいい香りが鼻をかすめる。

女の子だったらくらくらしてしまうだろう。


どうしてこうこの人はフェロモンを垂れ流しながら生活しているのだろうか・・・。










あの日から仁王と会話する回数が増えた。


そう、私が熱を出してしまった日。



仁王が看病に来てくれたおかげか、すぐに熱は下がり、無事に学校にも復活。

いや、あの後いろいろあったんですよ・・・・。


そのせいで若干熱も上がったりしちゃったりね。


意外にも仁王はちゃんと看病してくれたりして。

仁王の不安そうな顔を見るとああ、ちゃんと心配してくれてるんだって思えた。





本当、いきなり来たときはびっくりしたよ・・・・・・。

ただの嫌がらせかと思った。



でも、苦しくないか?とか、水飲むか?とか・・・。

あの詐欺師が結構余裕ない顔してた。


それ見て笑ったら「こっち見るな」ってまた仁王らしからぬ顔。


あれ、ちょっと照れた?







・・・・・・なんてことを授業中に思い出して笑ってる自分はなんなんだろう。


これ、に言ったら絶対「えー、にもついに恋の季節がきちゃった?」とか言われそう・・・。



ないない!だ、だってあの詐欺師だよ?!

あの日だってただヒマだったから来たぜよ・・・だったかもしれないし!!!

きっとああやって女の子で遊んでるんだ。


騙されちゃいけない。

調子に乗って浮かれてたら「そんな気ない」って言われて落ち込むのはこっちなんだ。



・・・よしっ!もう仁王の言葉にも仕草にも惑わされない!





「何そんな怖い顔しちょる。」


「そそそそうかな・・・?」


「笑ったり怒ったり・・・ほんと可愛いな。」


「っ・・・・///」



いっつも上から目線。


そうやって前と違って笑いかけてくるのが嫌だ。



その笑顔が本当に怖い。



「というか何でそこにいるのですか。」


「んー、空いてたから。」




私の隣の席(丸井くんの席ですけどそこ)にちゃっかり座る仁王雅治。


・・・騙されん!騙されんぞ!!!



「あー・・・あつ。」


ああ、またその動作。


クラスの女子がばったばった倒れていくのが想像できる。






「・・・・・・惚れた?」


ニヤリとこっちを向いて笑ってくる。


「ななななんで!!!!?」


「そんな凝視されるとさすがに恥ずかしいけぇ。」


「ああああなたがいけないんでしょう!!!」



「・・・お?やっぱ惚れてる。」


「っ!!!」



実はこういう会話は前に何度もやっている。


あの日以来、何を考えているのかよく話しかけてくる。

こういう人を馬鹿にした会話。




それでも仁王が人に話しかけることなんて今まで見たことがない。


もしかしたら・・・なんて思ってしまう自分がそろそろ嫌になってきた。


あああ!もう!!!



「じょ、冗談じゃって。そんな拗ねなさんな。」


「・・・・・・。」


「せっかく俺が話かけてやっちょるのに無視するんか?」


「・・・話しかけてほしくないもん。」


「・・・・・・。」



もうこれ以上仁王の顔なんかみたくなくて。

見ていたら騙されてしまいそうで。


たまらなくなって仁王に背を向けた。



ああ、なんて子供なんだろう。





でもなんだか急に苦しくなってきちゃって。



たかが仁王で。

この間喋ったばっかりなのに。

いつの間にか私の中に入ってきて・・・・・・。




「・・・・・もうよか。」




仁王はどんな顔をしていたんだろう。


せっかく俺がかまってやってるのに面白くない女だ。

調子乗ってるんじゃねぇぞ。

お前だけ特別じゃないんだ。



面倒くさくてうざい女。



ああ、何やっているんだ自分。


仁王はガタッと丸井くんの席から立ち上がり、どこかに行ってしまった。
























「・・・・・・・と、いうことなのですよ。」


「なるほど。さんもやっとその気になりましたか。」


「・・・・・・私にでも分かるように説明してください。」



と、ここまでのながーい道のりを比呂士に相談してみた。

頼れるのなんて比呂士くらいしかいない。


に話せばキャイキャイ騒がれてしまいには「幸村くん誘って合コンしよ!」とか言い出すもん(は幸村くん好き)





・・・にしてもその気ってどの気ですか。




「それでさんは後悔したんですよね?」


「えーっと・・・後悔というか・・・まあ・・・。」


「でしたらもう答えは出ています。」


「えええ!ど、どこらへんにですか?!」


「・・・・・・本当に分からないのですか?」


「分からないから聞いてるんだけど・・・。」












「・・・・・・仁王くんもきっと同じことを考えていますよ。」





「・・・や、やっぱり嫌われた?」



「いえ、その逆です。」



い、今キランって眼鏡が光った気が・・・。

比呂士はなんか言い切ったみたい満足している。



「それではそろそろ私は・・・。」


「ありがとうね。わざわざ時間割いてもらっちゃって。」


「いえ。頑張ってくださいね。」



比呂士は相変わらず優しい。

けど全然分からなかった気が・・・。


答え・・・答え?

そもそも答えなんて探してたっけ?



というかこんなこと悩んでるなんてまるで私が仁王のこと好きみたいじゃないか!!!





そんなことをうんうん考えていたらどうでもよくなってきた。
















































「・・・・・・?」


「あ・・・・・、」



どれくらい時間が経ったんだろう。


このまま帰るのもなんだか寂しい気がして結局教室に残ったまま。

夕日が差し込んでいる教室に1人・・・なんか少女マンガみたいでいいななんて思いながら居座っていたらいつの間にやらこんな時間。



いきなりドアが開いてビクッと反応してみれば・・・・



少女マンガだったら素敵な出会いになっているはずなのに。





「どこ行くんじゃ。」


「帰る。」



今日の会話。


比呂士に慰めてもらったけどやっぱり恥ずかしいことをしてしまった。


もう仁王の顔なんてみたくない。


・・・いや、見れないよ。


急いで鞄に荷物をつめこみ、教室を去ろうとした。


だけど、



「離して。」


「離さん。」


「帰りたい。」


「帰さん。」



無理やり突破しようと力を入れたらそれ以上の力で引っ張られて無理やりさっき座っていた位置へ連れて行かれた。


仁王といえばあの日とはまるで別人のような顔。

そう、人を騙したときのように、冷たい顔。





「・・・・・・なんで、」


「あ?」


「・・・・なんで、私にかまうの・・・・。」


「・・・・・・。」



ああ、言ってしまった。


言っちゃダメなのに。

かまってないって笑われるだけなのに。



一度出た言葉は鎖のようにとまらなくなってしまった。



「突然現れて、」


「家にまで押しかけて、」


「意味もなく優しくしてくれて。」





「・・・・・・。」




どんどんめちゃくちゃにしていった。



アナタと私じゃ住む世界が違いすぎる。




「うっ・・・・か、勝手に仁王の存在が大きくなってって・・・・。」


「う、うそっ・・・だっ・・・って分かって・・・・るのに・・・・・・。」




ああ、もう泣くなよ!!!

涙なんて流したくなかったのに喋れば喋るほど止まらなくなってしまった。



いきなりわけ分からないこと喋りだして泣いたんじゃ最低すぎて笑えない。









「・・・・・・もうよか。」




ああ、またこの言葉。


悲しい。すごく痛い。






「・・・・にお?」


「泣きたいのは俺の方。」



いきなり視界が真っ暗になっていて。

気付けば仁王に抱きしめられていた。





「ど、同情・・・・・・。」


「そんなんじゃなか。ほんに鈍い女じゃ。」










「告白したつもり・・・やったんじゃが。」


「???」



こ、告白?!




「キスした仲やき。」


「っ///」


















が好きじゃから。」





が愛しいから。」






「じゃから、来た。好いとぅんとこ。」









あ・・・・・・。


前にも同じようなの聞いた気がする。




も、もしかして・・・告白されてたのか?





「2度も詐欺師に言わすとは・・・。」


「ちょ、ちょ、ちょちょちょっと待って!!!」


「待たん。もう限界。」





全然状況が分からない。


きっと比呂士がいたら詳しく解説してくれるのに・・・。





なんてのんきなこと考えている余裕はなく、唇を塞がれた。





「・・・・・・か、からかってるんじゃなくて?」


「いい加減怒るぜよ。」



眉間にしわを寄せて暗い顔をする仁王さん。


ど、どうやら本気なようです。




・・・・・ま、まじ?













「でも俺のこと想ってくれてたんは嬉しい。」




見たことないような優しい笑顔でそう言われれば、


何も言えなくなっちゃうじゃんか。




「すごい・・・・・・苦しかった。」


「ククッ・・・好いとる証拠じゃよ。」


「仁王のせいだからね!!!」


「ん、ええよ。」














「そのかわり離れなれないくらい夢中にしちゃるぜよ。」























Hot Illusion
























「ちゃんと告白するき。こっち向きんしゃい。」























END