人は変わるものなんだね。









私も・・・。変わったのかな?














あの場所で












「ねね、今日どっか行かない?」


「んー?私はいいや。疲れてるし。」


「そっかぁー。残念。」





プルルルル♪






ん?携帯の着信音。

誰からだろ?




「ハイ。もしもし。」


「『オレだけど・・・。覚えてるよね?』」


「えっ・・・。っと・・・。」





誰だろう。

懐かしい声のような気もするけど・・・。





「『だよね?オレ、丸井ブン太』」


「あぁ。ってぇ!ブン太くん?」


「『久しぶり。まさか忘れてたわけじゃないよね?良かった。

  今から会ってほしいんだ。あの場所で』」


「あの場所・・・。あぁ。っでも何「『じゃぁね』」」





いきなりの電話。

幼馴染だった。

でも高校からは別。

変わりたかった・・・。

今の生活じゃいけないって思ったんだ。

うちの家はそういうの厳しくて・・・。

甘えてばかりじゃ世の中生きていけないって。

笑っちゃうよね。

でも自分でも・・・。変わりたかった。

ちょうど推薦も来ていた。

頭が良かったからね。

だから私は違う学校に転向した。

この3年間、ずっと会ってない。

高1の頃はよくメールもしてた。

でも・・。だんだんこっちの生活に慣れていったんだろう。

高2になるころにはすっかり音信不通。

今の今まで気に留めることは無かった。

なのに・・・。急に何で・・・。

不安を抱えつつ行くことにした。あの場所に。












* * *












人ごみ。

人ごみって苦手だな。疲れるし。

えっと・・・。あったあった。

大きな木。

街の中にひとつだけある。

ここで高校を変えることも相談した。

今はクリスマスイルミネーションでキレイに輝いている。





「お待たせ。」


「うううん。私も今・・・来た・・・と・・・こ。」


「そ。良かった。」





そこにいたのは・・・。

ホントにブン太くん?

背も高くなったし・・・。カッコイイ。

こんなだったっけ?





「本当に・・・ブン太くん?」


「フッ。何ソレ。本物に決まってんだろぃ?」





あぁ。ブン太くんだ。

中身はそんなに変わってないみたい。

外見は変わっちゃったけど・・・。





「ところで何の用?めずらしいね。」


「あぁ。オレと付き合って欲しくって。」


「っ!!!!!!」





え・・・。今・・・何て?






「聞こえただろ?付き合って欲しい。」


「な、何で・・・。急に・・・。」


「っていうかオレは前から付き合ってたつもりだったけど。
 中学ン時は忙しくてまともに付き合ってねーから・・・。いいだろぃ?」





言葉が出ない。

何で付き合ってたの?いつから?

そんなこと私は知らない。





「いつ・・・。付き合った?」


「ハァ?忘れちまったのかよ。
 小学校の時『好き』って言ってくれただろぃ?」


「そんな昔の話・・・。」





それにその時はまだ恋愛対象じゃない。

友達として「好き」って言ったんじゃないの?






「それは違くて・・・。」


「オレはすごく嬉しかった。
 だから今日まで彼女はお前だった。
 これからも・・・。ずっと・・・。」


「知らないっ!」





何それ。

急に会ってそれ?





「好きなんだよっ!オレはのことがっ!」





ガバッ。





「何でだよ・・・。
 昔はよく抱き合っただろ・・・。
 高校からだゼ。こんなに冷たくなったの。
 はオレのもんなんだっ。」


「いい加減にしてっ!」





おかしい。おかしすぎる。

昔と全然違う・・・。

抱きしめられた感触も・・・。

冷たい。暖かくない。

言葉は優しそうに聞こえて冷たく感じる。

変わったよ・・・。ブン太くんは。

中身も全部。





「違うの・・・。もう昔のブン太くんじゃない。
 感触も違う。声も違う。
 変わったんだね・・・。だからもういいじゃない。」


「オレは変わってない。
 変わったのは・・・。だろ?」





パンッ





「あ・・・。ゴメン。」


「・・・・・・。」





思わず頬をたたいてしまった。

悔しかった。

少しでも一瞬でも当たってるかもって思ったから・・・。

でも私は変わってないよね。

変わったのはブン太くんだよ。





「ごめん。それだけなら帰るね。
 ・・・・・・疲れてるから。」


「・・・・・・。」





何考えてるのかな・・・。

ビックリしたかな。

そんな殴るような性格じゃないし・・・。





これで・・・。良いよね?












痛かった。

今まで生きた中で一番痛かった。

変わったのはオレじゃない。

の方だ。












「ハァ・・・。」





まともに授業なんて受けられない。

昨日のことが頭から離れない。

どうしよう・・・。

つい、カッとなって手を出してしまった。

でも・・・。ブン太くんが悪いんだ。

まぁ、変わろうとしたのに変わってないっておかしいけど。





「コラッ!、聞いているのか?」


「うっ・・・。ス、スミマセン・・・。」





よしっ。もう考えない。

あれだけのことしちゃったし・・・。また会うことなんてないだろうから。





* * *





「ねぇ〜。。今日イヴだからどっか行かない?」


「んと、ゴメン。今日は彼氏と過ごすんだ〜。」





そっか・・・。

もう高3だもんね。

彼氏ぐらいいなきゃね・・・。





プルルルル。





「ハイ。もしもし。」


「『か・・・?オレだけど。』」


「ブ、ブン太くんっ!」





な、何で・・・。





「『話があるんだ。あの場所でまた待ってるから。』」






ブツッ。




「えっちょっ・・・。」





また勝手にきられちゃった。

どうしよう。

これは行くべき・・・なのかな?





* * *





会えた。

それだけで嬉しかった。

それだけで十分だった。

それなのに・・・。欲を張ってしまった。

わがままなのかもしれない。

でも・・・。

手に入れたい。

オレは変わったかもしれない。

だけどそれはも同じだ。

もう一度・・・。抱きしめたい。

あの感覚をオレは忘れたくないんだ。





イヴだもんね。今日は。

なんでこの日に一番会いたくない人と会うんだろう。





・・・。」


「・・・・・・ブン太くん。」





今度は先にブン太くんが来ていた。

大丈夫。

思ってることをそのまま言うんだ。





「あのさ「オレが先に言ってもいいかな?」」


「あっ・・・。う、うん。いいよ。」






先に喋んないと気持ち伝わりそうにないから。





「こないだは・・・。ごめん。あんなこと言って・・・。」


「うううん。私こそ叩いちゃってごめんね。」


「でも・・・。やっぱり好きなんだ。
 好きで・・・。たまんねぇ・・・。」


「ブン太・・・くん・・・。」


「昔のようにはなれないのかもしれない。
 でも、幼馴染じゃなくてちゃんと付き合いたいんだ。オレは。」


「どうして・・・そこまで・・・。」


「好きだからだっ。」





なんでだろ・・・。

さっきまで考えてた言葉がいっきに飛んでしまった。

抱きしめられた。

それだけなのに・・・。ただ優しい言葉をかけられただけなのに・・・。

こんなに・・・。大きくて・・・。暖かい・・・。

よく分かんないけど嬉しい。





「うっ・・・うっ・・・。」


「泣くなよ。」





ずるい。ずるすぎる。





「ん?」


「私が先に話してれば・・・。
 違う結果だったかもしれないのに。」


「どんな場合でも同じだよ。
 ただ早く手に入れたかっただけ・・・。」


「ハァ・・・。」


「どうした?」


「今度は私が言うね。」


「何を?」





さっきまで言おうとしてたことと違うけど・・・。

今は本気でこう思ってるから・・・。





「好きです。」


「オレも好き。」





この感覚。

昔より柔らかくなったよ。

大人になったなぁ・・・。





「ブ、ブン太くん!?」


「あ、ごめん。つい。」





胸倉にの顔をずっと押さえつけてしまっていた。






「メリークリスマス。」


「メリークリスマス。」





触れた唇は・・・。

オレ達の永遠の愛を。

ツリーは・・・。

暖かくその愛を見守っててくれて。

何よりこの瞬間が・・・・。

嬉しい。





。」


「何?」


「お前最高っ!」


「何々急に。」





なんともないこんな会話が。

オレには幸せでたまらない。





---最高のプレゼントを君に。---












END