「今日の帰り、ちょっと待っててくれない?」


「え、あ、うん・・・・・・。」





意外な人からのお誘いだった。
















そばにいてほしい
















不二周助。





カッコよくって何でもできる天才。


私との関係はただの幼馴染。





でもね、好きなんだ。





大好きなんだ。








でも幼馴染から恋には発展しないって誰かが言ってた。








そんなの嘘に決まってるけど。







私には勇気がない。











「ちょっと今日の帰り、待っててくれない?」





すごく嬉しかった。


久しぶりのお誘い。

1年の頃はいっつも一緒に帰っていたのに。

いつの間にかそれもなくなっていた。


周助はマイペースなとこがあるから・・・とか思ってた。

部活も忙しそうだったし。



でも話す回数も減っていって・・・。





じゃんっ!!!久しぶり〜!」


「英二くん。」


「どしたの?俺のこと見にきてくれたの?」


「んー、まぁそんなとこかな。」


「やったー!!!俺、今日は頑張っちゃうからね。ちゃんと見ててね。」


「うん。頑張って。」





いいなー、英二くんは。

なんて思ってしまう。



それを見ていた周助が嫉妬していたことなんて知る由もなく。










「やぁ、。お待たせ。」


「うううん、待ってないから大丈夫。」


「じゃぁ行こうか。」


「うん・・・・・・。」





ずっと望んでいたこと。

でも目の前にその現実があるとちょっと怖い。



それでも前に進もうとした瞬間。





「ああー!不二だけズルイぞ!抜け駆け!」


「・・・・・・英二くん?」


「英二。何してるんだい?」


は俺のこと見に来てくれたんだよ。だから俺と帰ろ。」


「・・・そうなのかい?。」


「え、いや、その・・・・・・。」





なんとも言えない。


こ、こういう場合はどうしたら・・・。





「なんてね。不二の邪魔はしないよー。じゃねっ、。」


「え・・・・・・。」


「英二・・・、全く・・・。」





状況の掴めない私の手をとり、歩き出す周助。


そ、そっか、冗談か・・・。

少し安心したのもつかの間。





な、何で周助と手繋いでるの・・・。





「昔はいつも繋いでたじゃない。」


「そ、そうだけど・・・。」


は嫌なの?」


「いや、そういうわけじゃ・・・。」


「じゃぁいいよね。」


「・・・・・・。」





い、いいのだろうか?


っていうか会話とか無い・・・。





「周助、ここ入るの?」


はおかしいな。昔はよく来てたじゃない。」


「そ、そうだけど・・・。」





昔は確かに良く来ていた。


ただのファーストフード店。


いつの間にか私は周助のことを美化していたのかもしれない。

・・・・・・・だって周助がこんなところに入るイメージないんだもん。





、何か頼む?」


「んー、いいや。」


「そう?」


「うん。」





やっぱり会話が無い。


というか何で周助は私を誘ってくれたのだろう?

いつもは部活の人たちと一緒なのに・・・。


よし、それを聞こう。





「あのね。」「あのさ。」


「あ、いいよ、から。」


「うううん、周助からでいいよ。」


「じゃぁ・・・。」





同時に重なった言葉。


ちょっと嬉しかったり。





はどうして最近僕に冷たいの?」


「・・・・・・へ?」





い、いまいち意味が分からん・・・(冷たいって)


っていうかちょっと開眼ぎみで怖いです。





「つ、冷たいかな?」


「うん。部活も見てくれないし話しかけてもくれない。」


「そ、それは周助が・・・。」


「僕のせい?」


「あ、いえ、その・・・・・・。」


「それによそよそしくなってるし・・・。」





そ、それは周助が私を避けているからじゃんかっ!!!


でもそんなこと言えない。





「それはやめてほしいな。」


「う、うん・・・。」


「で、の話は何?」


「え、あ・・・・・・・・。」










「何で周助は私を誘ったの?」










長い沈黙。


周助は不思議そうな顔をしている。





「誘っちゃいけなかったの?」


「い、いやそういう意味じゃなくて、その、久しぶりだったから・・・。」


「んー、それはね・・・・・・。」










のことが好きだからかな。」












「・・・・・・え。」





「何も頼まないなら外に出ようか。」





私が唖然と口をあけているのにも関わらず席を立って外に出ようとする彼。


あわてて正気に戻り、後をついていく。


・・・・・・いまだにさっきの言葉が理解できない。





「雪、降ってるね。」


「え、あ、う、ん・・・・・・。」







「あの・・・。」





店の中から店員さんが出てきた。





「良かったらこの傘お使いください。」





ここのお店のサービスらしい。

でもまた来たら返して欲しいと。


差し出されたのは2本の傘。





「1本でいいですよ。」


「は、はい・・・。」





いっぽん・・・・・・。


そ、そうか。周助は私に濡れて帰れと・・・(酷い)

さっきっから思考がおかしくなっているせいか1本という言葉を理解できない私。





「いいよね?」


「え、あ、うん?」


「じゃぁ、ほら、もっとくっつかないと濡れちゃうよ?」


「え・・・・・・。」





そう、その1本の意味は



周助だけが使うのではなくて



私と一緒に使うという意味だった。





(い、いわゆる相合傘?)





END