『生きるためには愛がいる』
よくある言葉
よくあるセリフ
こんな下らないものを信じるヤツは馬鹿だと思っていた
生きるためには愛がいる
「チッ・・・・・・。」
また同じセリフ。
恋愛ものの本の最後にはたいていこういうような言葉が並べてある。
でも、今じゃ何となく分かるぜ?
この主人公の気持ち。
「?」
部活の後。
野郎どもが帰った後、いつも俺は自主練している。
まあ、200人も部員がいるからな。
部活中のびのびと練習なんてできねぇ。
疲れた体を部室へと運び、その扉を開ける。
「・・・・・・風邪ひくぞ。」
はこうしていつも待ってくれている。
俺から言ったわけじゃない。
「ご、ごめんね?勝手に部室入っちゃって・・・。
でも、校舎は鍵かかっちゃってて・・・・・・。
どうしても景吾くんのこと待ってたくて・・・・・。
あ、あの、迷惑だったら言ってね!
っていうかこういうのウザいよね・・・・・・・。」
正直驚いた。
俺がこうやって自主練しているのを知ってるヤツはあまりいない。
レギュラーだって知らないくらいだ。
それを・・・・・・・
「・・・別に嫌じゃねぇ。」
「えええ!!!」
「(何で驚くんだ)・・・・・・ありがとな。」
それから毎日待っていてくれる。
他の女だったらウザがってただろうな。
1人の時間を邪魔されるのは好きじゃねぇ。
「、だけは・・・・・。」
コイツだけは、特別。
今までの俺とは確実に違うタイプの女。
1つ1つの反応が面白くてしかたない。
バカかと思えばそれ以上に読めない行動。
俺の心に入ってきやがる。
それがいつの間にか心地よくなっていて。
本でも読んでたのかイスに座っているにも関わらず、机に突っ伏している。
・・・・・チッ、腕で隠れて顔が見えねぇ。
「ったく・・・・・・。」
ロッカーの前に立ち、とりあえず着替え始めてみる。
この妙に緊張する感じは何だ・・・?
フツウのヤツなら見られたところでなんとも思わねぇ。
・・・・相手がだからか?
ジャージを脱ぐ。
後ろを振り返ってみる。
・・・・・・気持ちよさそうに寝やがって。
襲われたらどうすんだよ(襲うのは俺だけどな)
「・・・・・・・んー・・・。」
がらにもなくドキッとする。
寝言か・・・?
見られてもねぇのに緊張するなんて俺様に似合わねぇ。
素早く制服に着替える。
の体制は変わらず。
「・・・・・・まじで風邪ひいても知らねぇぞ。」
毛布をそっとかけてやる。
もう起きろと言うべきなんだろうが・・・。
そんな気持ちよさそうに寝られたら起こせねぇだろ。
隣のイスに座ってみる。
顔は見えない。
「・・・・・・・・コレもか。」
が読んでいたであろう本を手にする。
「『生きるためには愛がいる』」
が俺の前から消えたら。
そう思うだけで柄にもなく怒りがこみ上げてくる。
ああ、俺はもうなしで生きていけねぇんだって。
気付いちまった。
「風邪、ひくぞ・・・・・・。」
瞼が重くなるのが分かる。
「景吾く・・・・・ん・・・・・・?」
「・・・・・・・・。」
「んー、ここ、どこ・・・・・・。」
「・・・・?」
「わわっ!景吾くん!風邪ひいちゃうよ!!!」
あわてて自分にかかっていた毛布を俺にかける。
ったく、ホント、世話焼きなヤツ・・・。
「よく眠れたかよ。」
「えええ!寝てた・・・の・・・・?」
なんだ、気付いてなかったのか。
「景吾くんこそ・・・・疲れてたのかな?」
そうか。
俺も一緒に寝ちまったんだった。
あまりにもの隣が心地よくて。
「風邪、ひいてない?寒くない?」
「がいるから寒くねぇ。」
「あー///う、うん・・・・・・。」
くくっ。
あからさまに照れた顔しやがって。
だから思わず撫でたくなる。
「ちょっ、な、何で頭撫でるんですか・・・。」
「くくっ・・・・・・。」
「か、帰ろう!わ、もうこんな時間だよ!!!」
真っ赤になりながら慌てふためくは本当にかわいい。
「なあ、この本・・・・。」
「え?あ、うん。それ面白いよ。」
「お前はどう思う・・・・?」
指をさしたのは例の言葉。
「あ・・・・。んっと・・・・・・。
そうだと思うよ。生きるためには愛がいると思う。
それはさ、別に恋人からとかじゃなくても・・・。
大切な仲間だったり、友達だったり・・・・・。
景吾くんはいっぱいそういう人いるじゃん!
だから羨ましいよ。」
ほら、また。
俺が探してた言葉をフツウに言う。
「には・・・・いないのか?」
「私?んー・・・・・どうだろう?」
いるに決まってんじゃねぇか。
「俺がなってやってもいいゼ?」
「えええ!あー・・・あはは・・・・・・。」
「俺がなったら、他のヤツからの愛なんて受け取らなくていい。」
はまた真っ赤になる。
そう予想していた俺にはびっくりだった。
「ぷっ・・・・・・・あはは!」
「・・・・・・(怒)」
「景吾くん、なんかおかしいよ?」
真っ赤になるどころか思いっきり見つめられた。
お、俺が真っ赤になってどうすんだよ。
「ふふ、可愛い。」
「お前な・・・・・・。」
「うん、景吾くんからの愛があるだけで生きていけるよ。」
「当たり前だろ。」
生きるためには愛がいる
俺もお前だけいればいい
END
甘ったるくなってしまいました
素敵な企画に参加させていただき、本当にありがとうございました!