好きだ。だから伝わらない。
罪な女だな、お前は。
Versprechen"約束"
「どしたの?。」
「えっ!?別に?」
「だってずっとボーッとしてるんだもん。」
せっかく元気ないから一緒に遊んであげてるのに。
「本当に大丈夫?最近めっちゃ元気ないけど・・・。」
「そうかな?いつも通り元気バリバリだと思うんだけど。」
その顔。
苦笑いだよ。
親友の私が言ってるんだよ?
もっと笑いなって。
「じゃん。」
「あ、宍戸・・・。」
宍戸とは幼馴染。
だから結構仲が良かったり。
「ちょっと話しあるんだが・・・、外せるか?」
「うん。ちょうどいいわ。今日はこのへんで別れようか。」
「そうだね。今日はありがとねー!!!」
あの娘、大丈夫かしら。
心配だわーって何お母さん目線で喋ってんのよ!(お前だろ
「何?話って。」
「あ、ああ。」
宍戸から話しかけてくるなんてめずらしい。
いつもシャイだからね(笑
一体なんだろう?
「好きだ。」
「ふーん・・・っては?」
え、今なんて・・・。
スキ?
スキってどう書くんだろ・・・。
空きかな?隙かな?
「好きだ。」
あぁ、『好き』だ。
ってぇ!!!何でそんなこと!!!
「宍戸、熱あるんじゃないの?」
「真剣に聞けよ。」
「・・・・・・。」
「お前のことが好きなんだ。付き合ってほしい。」
直球。
でも宍戸らしいね。
すごく伝わってくるよ・・・。
「で、でも・・・。」
「あぁ、分かってる。お前には跡部がいる。」
跡部景吾。私の彼氏。
好きだった。大好きだった。
告白も私からだった。意外にもOKで最初はびっくりしたっけ。
もちろん宍戸にも告白しようか相談した。
一応同じテニス部だしね。
だから知ってるはずなんだけど・・・。
「景吾のこと・・・。」
「アイツのことも全部考えてお前が好きだ。」
「ぅ・・・・・・・。」
「跡部に中途半端な愛はいらねぇと思うぜ。」
好きだった。そう、過去形。
だって今はあんまりそうは思わないから。
「ちょっと考えさせてほしい。」
「・・・・・・ふらないのか?」
「だって・・・。」
確かに中途半端なのかもしれない。
「ゴメン、考えさせてね?」
「あ、あぁ・・・。」
意外な答えだった。
ったく跡部はどんな接し方してんだよ。
の彼氏だろ?
* * *
どうしよう宍戸のこと。
次の日になってもまだ結論は出ていなかった。
授業中はずっとそのことばかり。
あんなに真剣に言われたら・・・。
ん?携帯が鳴ってる。
誰からだろ?
『ハイ。もしもし。』
『・・・・・・。』
『もしもし?』
『放課後教室にいろ。』
『・・・・・・景吾?』
『話がある。』
『え、ちょ、待って!』
ぶつっ。
一方的な電話。
そういうのも気に食わない。
* * *
「何?景吾。」
「・・・・・。」
無言で近づいてくる。
顔が怖い。
「キャッ!」
「何考えてんだお前。」
肩を強く押されて壁に押さえつけられた。
目の前にはお怒りの彼氏が。
ってういかなんで怒ってるのさ。
「何か悪いことした?」
「昨日。」
「ん?」
「宍戸に告られてただろ。」
「ッ!何で!」
何で景吾がそのこと知ってんのよ!
あそこには誰もいなかったはずなのに・・・。
「一体誰が・・・。」
「ッ!!!」
「っ・・・。」
「何ですぐ断らなかった。」
「だって・・・・・・。」
「だってもあんのかよ!!!」
すごい剣幕で怒ってくる。
怖い。すごく。
「だって・・・。でもまだ返事は・・・。」
「考えるって言ったんだってな。彼氏がいるのにか?」
「だって景吾はいつも!」
「あ?何だよ。」
怖い。もう嫌だ。
怖がりながら付き合ってなんていけない。
「いつもかまってくれなんて言わない。忙しいのは知ってるから。
でも少しは・・・。気にかけてほしい。
嫌われてるみたいで・・・。
分かったよ。だったらここで言うよ。
景吾・・・、もう別れ・・・・・・・ッ。」
「言わせねぇよ。」
『別れよう』そういう言おうとしたら唇をふさがれた。
後ろは壁、前は景吾。
強く、噛み付くように。
「ぅっ・・・。け・・・ご・・・。んはっ、やめ・・・て・・・。」
「離さねぇよ。絶対に。」
「お前が愛してるっていうまではな。」
涙が自然にこみ上げてきた。
頬を伝って景吾の頬に伝っていった。
「悪かったな。かまってやれなくて。
好きだ。それは変わらねぇ。
告白される前から見てたんだぜ?
もう、オレから離れるな・・・。いなくなるな・・・。」
「ぅ・・・ん・・・・。」
「泣くなよ。ったく泣きたいのはこっちだゼ。」
あぁ、やっぱり私には景吾が必要なんだ。
都合が良すぎるかもしれないけど。
「愛してるよ・・・。」
「オレも愛してるゼ・・・。」
今度は優しく口付けをした。
ゆっくりと両方の舌が絡めあう。
「やだ、誰か来るよ・・・。」
「いいじゃねぇか。」
時々なる水音。
その音は2人が重なってるみたいで嬉しかった。
「じゃぁ、宍戸のことふらなきゃな・・・、ちょっと可哀相。」
「相手に同情すんのかよ?ったくお前らしいぜ・・・。
でも、別にふんなくてもいいぜ。」
「は?」
「オレがしむけたからな。」
「え、どういう・・・。」
どうやら景吾は宍戸に頼んでわざと告白させたらしい。
そうして私の反応を見てたんだって。
だから告白されたこと知ってたんだ・・・。
「わー!宍戸に騙された!」
「フン。いいじゃねぇか。感謝しろよ。」
そうだね。
今度宍戸にはお礼言わなきゃ。
もっと距離が短くなったよって。
君と約束したこと。
深い愛。誓った愛。
絶対に忘れはしない。
例えこの身が朽ちようとも
それだけは守りきるから。
END
苦しんでる跡部が書きたかった。